EXTERNALDIRECTOR

TOP > INTERVIEW > EXTERNAL DIRECTOR

社外取締役 野木村 修

新卒から半導体会社(日立製作所、現ルネサスエレクトロニクス)に入社。
ルネサスエレクトロニクス(株)の執行役員兼生産本部長を歴任ルネサスセミコンダクタパッケージ&テストソリューションズ(株)の社長就任。株式会社TMHの外部顧問を経て、現在は社外取締役を務める。

半導体業界への愛をTMHに託す

Entrust your love for the semiconductor industry to TMH

これまでの経歴をお聞かせください。

エンジニアとして半導体会社に入社し、定年退職するまでずっとこの業界一筋で働いてきました。当時のエンジニアには大きく分けると「拡散」と「フォト」という2つの技術分野があり、拡散は酸化膜などを付ける工程、フォトは写真の技術を使ってウェハー上に回路を転写する工程です。私はこのうちのフォト部門で、転写・エッチング・パタンニングなどの技術を身に付けていきました。

ただ実際にエンジニアとして勤務していたのは、約6年ほど。その後ライン管理者を経て生産管理部の責任者となり、生産全体や工場のオペレーションを管理してきました。

生産の責任者をしていたので、現場のエンジニアに比べると特定の技術が豊富にあるわけではありません。ただ「こういうケースはどうすればいいのか」という相談を受けたとき、長年の経験と知識から「その場合はこうしていけばいいんじゃないのか」「それは実現が難しい」といった全体を見渡した判断が可能です。そういった点で「外部顧問」という立場から、アドバイスさせていただいています。

TMHの顧問を務めることになった経緯を教えてください。

現役を引退したあとも「半導体業界に恩返しがしたい」「かつての仲間の手助けをしたい」という想いが深く心に根付いていました。

日本の半導体工場は多くの問題を抱えています。例えば、メーカーは古い工場の面倒は見てくれないし、最新設備は買えない。私の現役時代から、八方塞がりの状態が続いているんです。しかしそういった工場こそ、支えていかなければならない。小さな工場が存続することでこそ半導体業界の未来がある、と考えていました。

だから現役引退後も、半導体業界でがんばっている企業で私の知識がお役に立てばと考え、2021年12月、想いが合致したTMHの外部顧問に就任させていただくことになりました。

ベンチャーだからこそ、
失敗を恐れず前へ

Because we are a venture company, Move forward without fear of failure

客観的に見た経営陣の印象を教えてください。

初めてお会いしたのはWEB面談でした。一言で言うと「正直な方々」という印象でしたね。

この歳になると、初対面でも相手が信頼できるかどうかの判断ができるようになるんですよ。だから顔を見てお話して、「この人たちは絶対に嘘をつかない」と確信しました。

また、人柄に魅かれたというのも大きなポイントです。皆さんが若くてエネルギッシュなところに好感が持て、熱い想いを持った榎並社長を、香月さん、関さんの2人が支えているバランスのいいチームに見えました。

TMHの経営陣は面談で、「町工場を支えたい」と情熱的に語ってくれました。彼らの理念に、強く共感したのを覚えています。業界のOBとして恩返しができる機会となっためぐりあわせに、とても感謝しています。

大企業で勤務されてきた野木村さんから見たベンチャー企業(TMH)はどのような印象でしょうか?

いい意味で、「失敗をおそれず挑戦できる」という点でしょうか。

例えば大企業は失敗したときの影響度が大きいので、何事も慎重にならざるを得ません。失敗するとマイナス評価されるので、挑戦することに対して誰もが及び腰になってしまいます。
大企業の経営はよく大型船に例えられますが、船が大きければ大きいほど舵を切るのも大変だし、舵を切ってから結果が出るまで時間がかかるんです。

それに対してベンチャーは、「失敗してもとにかく前に進んでいかなければならない」というスタンス。特にTMHは、大手企業ではできなかったことに挑戦しようとしている企業ですね。
私も常日頃から、取り返しがつく失敗はどんどんするべきだと思っています。意思決定が素早くでき、冒険心やチャレンジ精神がより重んじられる点が大企業とベンチャーの大きな違いでしょうね。

技術力の強化で半導体業界を救う

Reinforcing technological capabilities to save the semiconductor industry

TMHの課題、事業成長に必要なことはどんなものがあると思いますか?

やはり、これから大事になってくるのは「技術力」だと思います。

現在デバイスメーカーは、老朽化した部品の代替品を探すことに苦戦しています。限られた情報網しか持たず、代替品を探しきれないメーカーに、しっかりアプローチできるような仕組みづくりが必要ですね。それにはTMHのLAYLAが有効ですが、特殊部品をマッチングさせるのは非常に難しい。そして、供給したものには必ず限りがあること。どんな部品でもいつかは世界中から在庫がなくなり、工場はより苦しい状況に陥ります。

そういった問題に対してTMHが代替品を製作し、部品を提供できるようになればと考えています。100%のマッチング率ではなく、80~90%の整合性で汎用的に使える部品でいいんです。例えば、共通したコア部分にアダプトで対応するような部品が製作できれば理想的ですね。
そんな部品があれば世界中の工場の需要を満たすことができ、TMHの成長にもつながるのではないでしょうか。

野木村さんが考えるTMHの将来性、魅力について教えてください。

町工場の稼働を維持することが、半導体業界全体の底上げにつながると考えています。その点こそがTMHの成長のキーになるのではないでしょうか。

例えば大手では、主に利益率の高い12インチのウェハーを製造しています。大手が作りたがらない8インチ以下は利益率は低いものの、需要がないわけではなく、世の中に必ず必要なもの。そしてその8インチ以下のウェハーを製造しているのは、町工場です。今後の半導体の進歩のためにも、8インチ以下のウェハーを製造している町工場の技術を存続していかなければなりません。

TMHの情報力や機動力は、町工場を、そして半導体業界全体を元気にすることができると思います。これから踏んでいかなければならないステップはたくさんありますが、一つずつクリアできるようお手伝いしていきたいです。