PROJECTSTORY

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株式会社TMH
取締役 経営管理部長
関 真希
LAYLA

半導体業界のサプライチェーンの課題解決に向けて開発された
「LAYLA」(レイラ)。国内の半導体業界では例のないEコマースに参入した経緯や公開後の反響、これからの展望など、LAYLAプロジェクトについてお聞きしました。

半導体業界の課題をEコマースで解決

Solving problems in the semiconductor industry with e-commerce

LAYLAの概要を教えてください。

LAYLAは、世界中のサプライヤーと半導体メーカーをつなぐプラットフォームです。2018年4月に立ち上げました。半導体メーカーはプラットフォームを利用して半導体製造装置や部品を簡単に国内外から購入することができます。

全世界のサプライヤーが保有している実在庫をLAYLAで可視化、半導体メーカーを始めとした多くの企業様がその情報を閲覧し、部品調達ルートのひとつとしてご活用いただいています。

どのようなきっかけでLAYLAを立ち上げたのですか?

弊社の代表の榎並が、昔ながらの部品調達に課題意識を持っていたことがきっかけです。
部品の調達も半導体製造工場が1件1件業者に問い合わせて部品を探すというやり方でした。世の中はこんなにもEコマースが普及しているのに、いまだに個人のネットワークに依存している。その古風なやり方を、電子化で改善できないかと考えていたそうです。

特に当時、半導体部品に特化したECサイトがありませんでした。信頼できるセラーを集めてリスト化し、保証期間や価格が一目見てわかるようなECサイトがあれば、お客様に喜ばれるのではないか、というところからLAYLAの開発がスタートしました。

このプロジェクトを立ち上げたときの様子を教えてください。

プロジェクト立ち上げにあたって、LAYLAに関する戦略を徹底的に練り上げました。システムに落とし込む前にビジネスモデルを作成し、構想を策定しておかなければ、プロジェクトを成功させることはできません。
競合状況や市場規模、モール型にするか直接販売型にするかのECパターン等、収益に至るまで様々な面から検証を行いました。

最終的に私たちはプロジェクトの柱として、

(1)ユーザーの利便性
(2)立ち上げまでのスピード
(3)高い信頼性

この3つを掲げ、開発に取り組んでいきました。

スピード重視の公開と
その後に直面した壁

Publishing focused on speed and the wall you face after

LAYLAプロジェクトはどのように進められたのですか?

プロジェクトが失敗する原因の多くは、計画に時間を費やしすぎて市場変化にフィットできなくなることです。そのため私たちは短期間でリリースし、リリース後に問題点を改善していくという方法を選択しました。

例えばサイトを多言語化すると、膨大な時間がかかります。そこでまずは英語だけに絞り、公開へと進みました。
またシステム開発を内製するか、外注にするかもひとつ大きなターニングポイントでしたね。LAYLAの競争優位はシステム自体にあるのではなく、参加するサプライヤー及びバイヤーの登録数や商品の品質にあると判断し、内製ではなく外注を採用しました。

これらの判断は、先行者利益が大きいと直感的に感じたことも理由のひとつです。
結果的にプロジェクト立ち上げからリリースまで、約8~9カ月の期間でLAYLAを世に送り出すことができました。

プロジェクト進行において、壁に感じたのはどのような事柄でしたか?

スピード重視のプロジェクト進行も大変でしたが、リリース後に直面した壁のほうが大きかった印象です。一つはLAYLAの登録件数を増やすこと、もう一つはユーザビリティの向上です。

例えばユーザビリティの面では、当初の決済方法として想定していたのはPayPal(ペイパル)のみだったのですが、台湾や中国、韓国では馴染みがないということで途中から銀行振込も採用しました。
また「グレートファイアウォール」(金盾)と呼ばれる中国のインターネット検閲システムも大きな壁でしたね。

他にも、SEO対策やインデックス対策、広告費用、KPIの設定など。考えるべきことは数え切れないくらいありました(笑)

そういった壁をどのように乗り越えてきたのか教えてください。

常に意識しているのは、課題に対する原因を徹底的にあぶりだし対応策を練るということです。課題は重要性や優先度を考慮しつつ、タイミングを逃さずアクションすることが大切ですが、原因に挙げた事柄はあくまでも仮説でしかありません。一つ一つ考察していくのは非常に根気がいる作業です。

決して楽な仕事ではありません。ただ私自身は、良いストレスは人を成長させると考えているので、常にストレッチをかけながら仕事と向き合っていきたいですね。自分の経験値が増えていくと思うと、楽しく仕事ができるんですよ。
オンオフの切り替えも大事ですね。家族と必ず夕食を摂る、趣味の釣りを楽しむなど、メリハリをつけながらポジティブに仕事をしていこうと思っています。

LAYLAを中心に拡大していく事業

Expanding business centered on LAYLA

LAYLA公開後に社内外で変化した部分を教えてください。

半導体装置の部品は単価が高く、1つが何百万、何千万円という世界です。当初はその単価の中で、ボタンひとつで購入するEコマースの形態が馴染んでいけるのかという懸念はありました。ただ実際にはじめてみると好評でしたね。

特に2022年以降、これまでの取引基盤があるという利点から売り先を国内に切り替え、LAYLAをカタログのようにご使用いただく例が増えました。欲しい商品があればお問い合わせをいただき、直接ご注文をいただくという方法です。これが国内のお客様にとても喜ばれました。

ただこの方法で得た売上は、社内的にはLAYLAの売上としてカウントされないんです。LAYLAの売上がどれほど上がったか、厳密には把握できません。ただ国内登録者数や問合せ数を見る限り、LAYLAのおかげで、お客様の利便性が高まったのは確かですね。

LAYLA開発プロジェクトを通じ、変化した意識やスタンスがあれば教えてください。

やはりPDCAをしっかり回していくことが大事だと実感しました。私はこれまでの経歴から計画や戦略には強いほうなのですが、とはいえビジネスはいくら考えたところで計画通りにいかないことも多いですよね。
長期間考え込むより、「いける!」のように直感的に進むことも時には大事だと思います。

今後の展望や挑戦していきたいプロジェクトについて教えてください。

ひとつはIPO(株式上場)に向けたプロジェクトですね。会社として、もっとも力を入れているプロジェクトです。

LAYLAに関することで言うと、今期(2022年度)から国内展開したことで、LAYLAの導入工場数は昨年度から約4倍、利用ユーザー数は約10倍と飛躍的に伸び(※グラフ参照)、お客様に浸透してきました。
購買担当者が国内の顧客から依頼を受けて部品を調達した際に、「実はこういうシステムがあるんです」とLAYLAを紹介する活動が実を結んだのだと思います。
バイヤーの登録数が増えたので、これからはサプライヤーサイドの強化に注力していきたいと思っています。

また現在のLAYLAは部品や装置の販売だけを行っていますが、今後は部品や装置のオークションサイトを作ってはどうだろうかと考えています。
プラットフォーム事業をさらに拡大して、エンジニアのマッチングもしていきたいですね。まだまだ半導体業界には改善の余地があり、私たちができることがたくさんあると感じています。